【本紹介①】『女王はかえらない』降田天 | 宝島社【ミステリ】

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本が好きだ。読書が好きだ。積ん読が好きだ。

部屋の中に大量に本が積まれているのが好きだ。気になった本を勢いで買うのが好きだ。本を読んでいる時間が何よりも好きだ。

そんなわけで、読んだ本を紹介しようと思う。今回紹介するのは、降田天さんの『女王はかえらない』。小学生のスクールカーストミステリーだ。ネタバレなしに感想を書いていくから、ぜひみんなも感想を共有して欲しい。

あさき

あさきです。Xnoteカクヨムで作品を連載中。Kindleでお仕事ラノベも出版しています。お問い合わせはこちら

目次

『女王はかえらない』著・降田天の概要

『女王はかえらない』は、降田天さんが送る小学校を舞台にしたスクールカーストミステリーだ。降田天名義ではデビュー作とあってクオリティが心配になるかもしれないが、降田天さんは別名義でしっかり章を受賞している作家さんだから、安心して欲しい。

というのも、降田天さんは実は萩野 瑛さんと鮎川 颯さんの2人組の名義となっていて、2007年には鮎川はぎの名義で第2回ライトノベル大賞のルルル文庫部門で着た衣装を受賞しているんだ。以降、少女向けのライトノベルを発表したり、高瀬ゆのか名義で少女向け漫画のノベライズを出したりなど、精力的に活動していたらしい。

そんなふたりによって書かれた『女王はかえらない』は、以下のように全3部作で構成されている。

  • 第一部 子どもたち
  • 第二部 教師
  • 第三部 真相

本読みの人ならわかると思うけど、第一部と第二部で本筋を描き、第三部で種明かしする構成だ。ミステリとしては王道中の王道。だからこそ、構成力と筆力の両方が試される内容となっている。

そのうえで、このミスで大賞を受賞したのだから、それはもう期待しても良いだろう。

タイトル女王はかえらない
作者降田 天
出版社宝島社
発売日単行本:2015年1月9日
文庫版:2016年1月8日
価格単行本:1,480円(税抜き)
文庫版:737円(税抜き)

第13回『このミステリーがすごい!』で大賞を受賞している

画像引用:第13回『このミステリーがすごい!』大賞公式サイト

『女王はかえらない』は、ミステリ好きなら大注目である『このミステリーがすごい!』の第13回で大賞を受賞している。ちなみにこの年に受賞したのは以下。

タイトル著者(敬称略)
大賞女王はかえらない降田 天
優秀賞深山の桜神家 正成
夢のトビラは泉の中に辻堂ゆめ

どれも出版されているから、読んだことがある人もいるんじゃないだろうか。

実際、第13回は大賞候補が3作あったらしく、審査員の方々は悩まれたようだ。単行本にはその苦悩が書かれてあり、読んでいてかなり楽しかった。

このミスは、ミステリーを書く作家としては、受賞を目指したい章の1つだ。大賞に選ばれるには、それに相応しい実力と魅力を兼ね備えていなくてはならない。

その意味でも、『女王はかえらない』は納得できるクオリティだった。本編を読んでから審査員のコメントを見ると、「うんうん、そうだよね」と頷くしかない。やはりみんな見る場所は同じなんだなと納得できるだろう。

『女王はかえらない』ざっくりとしたあらすじ

読書

『女王はかえらない』のあらすじは、以下の通りだ。

片田舎の小学校に、東京から美しい転校生・エリカがやってきた。エリカは、クラスの“女王”として君臨していたマキの座を脅かすようになり、クラスメイトたちを巻き込んで、教室内で激しい権力闘争を引き起こす。スクール・カーストのパワーバランスは崩れ、物語は背筋も凍る、驚愕の展開に――。伏線が張りめぐらされた、少女たちの残酷で切ない学園ミステリー。

引用:宝島社

東京からの転校生が来た結果、スクールカーストが壊れてクラスがぐちゃぐちゃになっていく、というお話。実にシンプルかつ、悪意に満ちていそうなストーリーだ。特に女子生徒なのが否が応でも期待させてくれる。

スクールカーストはどこの学校でも大なり小なりあるものだ。『女王はかえらない』では、誰しも少なからず経験しているだろうスクールカーストを、見事なまでに描ききっている。そのうえで、どのような事件が起こっていくのか。

人によってはトラウマを刺激されるかもしれない濃度で描かれるスクールカーストの有り様と、結末に向けて収束していくストーリーは、見事という他ない

1度読み終わったら、もう1回読みたくなるのも納得のストーリーだった。

『女王はかえらない』を読んだ感想(ネタバレなし)

読書

では、ここからは『女王はかえらない』の感想を書いていく。ネタバレはしないから安心して欲しい。

小学生のたちの抗争が非常にリアル

『女王はかえらない』の大きな見所は、本書の半分近くを占める小学生パートだ。ここが物語の起点になっているのだけど、作品そのものの魅力にもなっている。

小学生と言えば、友だちと夕暮れまで遊んだり、一緒に勉強したりといった、のほほんとしたシーンを思い出す人も多いとは思う。僕もそうだ。イメージするのは、小学生の頃の楽しかった思いでばかり。

だが、『女王はかえらない』は違う。そんな輝かしい部分ではなく、小学生だからこその残酷で無慈悲な負の側面を見事に描ききっている。ともすれば目を背けたくなるほどリアルに。

僕はそれが何とも苦痛で、心を揺り動かされた。輝かしい記憶の中に、一部でも「ああ、そういえばそんなことがあったかもしれない」と思い起こさせてくれたくらい、痛烈に刺さった。正直、何度か読み進められなくなったほどだ。

気が付けば読者も当事者になっていた

子供は大人と違い、無邪気に悪意を向ける。大人よりも残酷に人を追い詰めていく。

『女王はかえらない』では、それが見事に描かれていた。だからこそ秘められた謎が活きていたし、後半の大人パートの演出を印象付けるのに成功しているように感じられた。

しかも、大人になって読んだからこそ、どこか傍観者のような視点でいたのを逆手に取られたのも悔しい。

小学生のパートを読んでいる自分は、どこまで言っても大人だ。だからこそ、子供たちが送る日々を遠くから見ていた。しかしそれ故に、後半になって一気に物語に巻き込まれた。傍観者だったはずが、いつの間にか読者も当事者になっている。

そう思わせてくれるストーリー構成は、見事と言わざるを得ない。

ミステリ自体は普通

『女王はかえらない』は、ミステリではあるものの、謎部分に関しては特筆すべきポイントは無い。普段あまりミステリを読まない僕でも「うん、だろうね」と思う程度だったから、相当なものだ。なので、ミステリに期待してはいけない。

この作品は、あくまでもストーリーを読ませて読者を引き込むタイプの作品だ。ミステリはそのオマケ。読者を引き込むためのギミックに過ぎない。

このミスだからといって、ミステリ部分には期待しないようにしよう。

ストーリー重視のミステリが読みたいなぁ

って人にオススメだ。ミステリ重視の人は注意して欲しい。

『女王はかえらない』は総じて小学生の描写がずば抜けている作品

『女王はかえらない』は、総じて小学生の描写がずば抜けて魅力的な作品だ。ミステリに斬新さはないものの、序盤の圧巻とも言えるストーリーで、読者を一気にぶん殴って物語に引きずり込んでくれる。技術よりも、読ませる力で魅了してくれる作品とも言える。

ただし、小学生パートがあまりにも残酷すぎて、読むのを躊躇う人がいるのも事実だ。実際、僕も2回ほど読むのを挫折している。あの悪意についていけるのは、まともな精神状態でないと厳しい。

だからこそ、読後感はスッキリしない。微妙に苦手な味のハイチュウを食べた後のように、何とも言えない感情だけが残る。独特の余韻を持った作品だ。

ハッピーエンドデもなく、バッドエンドでもない。かと言って、何の感情が浮かばないわけでもない。

そんなスッキリしない終わり方が好きな人は、ぜひ1度手に取って見て欲しい。折に触れて読み返したい本になるだろう。

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