無味無臭ラノベ『極めた錬金術に、不可能はない。~万能スキルで異世界無双~』【レビュー】

やぁみんな、面白くないラノベ、好きかい?

ということで、今回は我らが進行諸島先生が送る異世界無双ラノベ『極めた錬金術に、不可能はない。~万能スキルで異世界無双~』の1巻をレビューしていきたいと思う。タイトル長くて打つの疲れる。

いつもの進行諸島節が炸裂しまくっているラノベだが、本体価格はそれなりにするので、読もうかどうしようか迷っている人の参考になればと思う。

結論から言うと、金額の桁をひとつ間違えて流通させちゃったのかな? と思わずにはいられない作品だった。金をドブに捨てたくない人は、とりあえず本記事を読んでもらえれば、大体の内容がわかると思う。

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1、ストーリー解説

ではさっそく、ストーリーを解説していこう。

主人公のマーゼンは、錬金術師。100年生きているが錬金術師としては半人前。冒頭の最初の言葉が「疲れたな……」というくらい、錬金術の実験に疲れを感じるようになってきていた。魔法薬という魔道具で加齢を遅らせていても、そこは人間。既に白髪の老人となっているマーゼンは、自信が作った「記憶が残った状態で若返る薬」を使って、錬金術を極めるために若返ることを決意。そして若返ってみたらなんと500年後!? 何故か文明が後退しナーロッパになっている世界でマーゼンは錬金術を極めるために第二の人生を歩む!

というのが本作の冒頭だ。もう突っ込みどころ満載すぎて、読んでいて楽しかった。

錬金術というのがキモになるのかと思えば、開始速攻で魔法薬という魔道具(この時点で頭が混乱した。薬と道具のどっちなんだ?)が登場し、更にその魔法薬は理論が完璧だから100%大丈夫という、謎の理論で保証されていた。この時点で主人公が正気じゃないと全力で表現していた。

主人公はその完璧な理論で作った魔法薬を飲み、見事若返りを成功。500年後の世界は何もかもが変わっていて、当然のように文明は衰退。冒険者がいやすい環境に作り替えられていた。

ただ、主人公が住んでいた時代の文明が全く明記されていないので、風景が全く思い浮かばない。例えば現代の人類が滅亡したら……と考えれば以下の動画のようになるのは想像しやすいが、

https://youtu.be/a8cPZBEreXk

主人公が若返ることを選択するプロローグで描かれているのは、「疲れた」「老人」「若返る」「500年」くらいなので、全くイメージがわかない。

ただまぁ、これは進行諸島氏の作品全てに共通することなので、そういうものだろうと流せはする。いちいち気にしていたらキリがない。

目覚めてからの主人公の行動は、以下のように進む。

目が覚めた主人公は、変わり果てた光景に驚きながら、「水の眼」という錬金術による魔法を使う。周囲の地形が無条件がわかるクソ能力によって街道に出ると、そこには困り果てた肉便器(ヒロイン)が。遠くから錬金術(周囲の空気を変質させることで、遠くの会話が聞こえるらしい)で様子をうかがうと馬車の車輪が壊れていたのだとわかり、颯爽と錬金術で修理をして(魔力をぶち込んだだけ)カッコいい場面を見せつける。ターニアと名乗ったヒロインと共に、近くにある冒険者の街に行くのだった。

となる。ブイブイふかせてきたね!

ちなみに主人公の名前は二章で初めてわかる。最初から名乗れや。カラーページに載ってるの後から気付いたわ。

読んでいて素直に思ったのだが、錬金術の意味あるのか? という点だ。錬金術やら魔力やらが出ていて、頭がどうしても混乱してしまう。錬金術にするなら錬金術で統一して欲しい。読者の共通認識として「錬金術≓魔法」という方程式が出来ている可能性が高い。これはそういう世界なのです、と明示するのであれば、丁寧に描いて然るべきなのであるが、今作にはそれが全くない。いやまぁ、進行諸島氏の作品は全てそうなのであるが。

錬金術をいったいどのような形で使っているのか。それが魔力とどう関係があるのかが全く描かれていないので、そういうものだと思うしかない。

なので、錬金術において主人公はドヤ顔で「錬金術の最も基本的な術式は、分解と再構成」と言うのだけど、その数行前で基本を無視した錬金術を使っている。どういうこと? わかるように教えてくれ、半人前の錬金術師。

また、気になったのがキャラクターの名前だ。

  • 主人公:マーゼン
  • ヒロイン:ターニア

似ている。実に似ている。

最初の母音と次の伸ばしまで一緒。名前で言うと半分が一緒だ。主要キャラは通常、名前を明確に分ける。同じ母音や子音を使わないなど、配慮されて然るべきポイントだ。じゃないと、読者が混乱してしまう。

なのに、この「極めた錬金術」では平然とそれをしている。錬金術しか極めてなくて他のことを考えられなくなってるのか?

ちなみに当然のこととして、キャラクターの描写は全てカットされている。どんな容貌なのかとか、どんな服を着ているのとか一切無い。何事もエコの時代、無駄を省くの良いことだ。文章でサボるな。

ストーリーを追うのがしんどくなってきたが、まだこれで二章だ。全部で九章構成になっている。地獄はまだこれからだ。しかし、僕は地獄に付き合わせたくないので、ここからは一気に行く。

冒険者の街「迷宮都市マイアハルト」に到着した主人公は、冒険者になろうと行動をし始める。迷宮都市マイアハルトは、迷宮の周囲に作られた街で、冒険者ギルドが二箇所(第一支部と第二支部)、錬金術ギルドも存在していた。この世界では、錬金術師は大した薬も作らない人間とされて蔑まれており、冒険者ギルドの第一支部にけんもほろろで追い出された結果、主人公は錬金術ギルドへ転がり込む。そこでポーションを作って「俺なんかやっちゃいました?」とやってのけた後、当然のように迷宮へ。途中でヒロインと合流した主人公は、錬金術(物理)で無双し、もっとポーションを作ってくれ! と高額の依頼を受けて作っていたところで、ドラゴンが襲来。本気見せるぜ? とカッコつける。

ここまでが一巻の流れだ。どうだい、実に中身が無いだろう?

迷宮都市の起こりは面白く読めたが、どう考えても異世界版普天間基地。金になるから集まって栄えた街だ。ちなみに街の描写は一切無い。当然だね、進行諸島氏なんだから。

ここで冒険者ギルドの第一支部と第二支部が存在し、それぞれの仲が悪いというのはストーリーに絡められそうな設定で面白く感じたが、この後ほとんど絡んでこない。メインは錬金術ギルドだ。

ここで主人公は初期も初期のポーションを作って、「す、すげぇ、とんでもねぇポーションだ!?」とギルド長を驚かせる。もちろん、自分が若造だから驚いてくれているんだろうな……までがセット。飽きるくらい見た。失格紋とノービスので同じシーンがあったの覚えているからな!

無事に錬金術ギルドに登録した主人公は、ヒロインと再会して迷宮へ潜る。迷宮内の描写? 無い無い。地下にあって昼夜関係なく冒険者が行動できて、壁が光っているくらいしかない。壁が光るだけで何キロもある平原を照らせるらしいが、粗末なことだ。そういう風になっている。

しかしさすが何作も本を出している進行諸島氏だけあって、抜かりはない。主人公の作ったポーションが何故かすぐに迷宮の奥深くまで運ばれ、そこで「すげぇポーションだ!」と驚くシーンまでしっかり作ってくれている。どうなっているんだろうね、この世界の流通経路。作ってすぐ迷宮に入った主人公より早く着いてるよ? お急ぎ便使ったの?

ポーション作成を引き受けた主人公は、何故か錬金術師が良くやる仕事の見張りを行い、タイミング良く現れたクソ強ドラゴンと対峙して一巻が終わる。

何なんだ、何なんだこのストーリーは!?

な、中身が一切無いぞ!?

悪かった点

ここからは悪い点を挙げていこうと思う。

描写が皆無

以前の賢者シリーズでもお伝えしたことだが、まぁ今作も同じように描写が全くない。キャラクターの格好や容貌まで、何一つ想像できない。イラストで補完してね、というラノベの究極に位置している。

ライトノベルがいくらイラスト付きをはいえ、限度というものがある。キャラクター小説なのだから、そこはしっかりと味付けをして読者に出してくれないと、読者は何もわからない。

街の描写にしても同じだ。全く無い。どんな姿の街をしているのか書いてくれないと、街の様子を思い浮かべられない。その街の息吹を感じられないので、演芸会の後ろにあるハリボテにしか感じられない。

魔物の描写についても同じだ。「ファイア・ミノタウロス」なんてその最たるもの。ミノタウロスのファイア。火を使っているからなのか、体が赤いからなのかも全く提示されていない。ただ名前だけが「ファイア・ミノタウロス」とある。こいつと凄腕冒険者たちが戦っているシーンが道中挟まれるのだけど、魔物の姿を全く想像できないので、とりあえず「ダンまち」のミノタウロスで補完しておいたが、果たしてこれが合っているのかもわからない。作品の奥深さがまたひとつ消えた。元から水たまりくらいの深さしかないけど。

戦闘もそう。魔物の描写がないので当たり前なのだが、当然戦闘部分の描写も少ない。主人公が何かをして魔物が倒れる、これだけ。剣で戦うシーンがあるのだが、主人公が剣で一回斬っているような描写だったが、直後のイラストでは三回ほど斬って通り抜けていた。いや、どっちが正解? 間違い探ししてるんじゃないんだよ?

迷宮についてもだが、これはもう言わなくてもわかるだろう。「壁が自分から光っている」「地下には広大な空間が広がっている」「草原がある」「全部肉眼で見える」。これしかヒントが無い。要は、スパロボで言うラ・ギアス的な世界が広がっているのだろうと勝手に解釈した。しかも一階層降りるのは階段らしい。不思議のダンジョンかな?

迷宮内で拠点となる街が後半登場するのだが、地面の色で「安全地帯」であると判断しているようだが、その理屈がサッパリわからないのもポイント。色が違うだけで安全と判断された根拠は? 魔物が近付かない根拠はなに? 自分の命をかけて魔物と戦っているのに、信頼に足る根拠がないと説得力が生まれないよ?

ハッキリ言って、根本から描写が足りていない。スカスカに行間を空けるなら、まず肉付けをしてくれ。ここまでスカスカで読者に丸投げスタイルだと、進行諸島氏は地の文が書けない人なのか? とすら思えてくる。これならト書きを読んでいるのと変わらない。

キャラクターがみんなハリボテ

主人公やヒロインのメインキャラ、サブキャラクターに至るまで、みんなハリボデて掘り下げされていない。ただそこにいて演じられているだけになっている。日本のB級ホラーで主役を演じているアイドルの方がまだキャラ立ちさせている。

主人公は全てのシリーズ共通と言ってもいいくらい、尖った部分がない。使える能力と他者にマウントを取る経歴が違うだけ。この主人公は事あるごとに自分の若返りを自慢したいのか「18歳」と「半人前」を必至にアピールしてくる。徹夜を自慢してる高校生のようで実に見苦しい。

地下迷宮だから昼夜の概念が無いという設定は良いが、真夜中に依頼を受けてそのままダンジョンに行こうとする冒険者が多すぎるのは違和感しかなく、体内時計という概念が存在しない世界なのか? と思わずにはいられない。人間は進化の過程で、陽の下で動くことを長い間ずっと続けてきた。夜型人間というのはその中でも希少で、睡眠時間やショートスリーパーのようにDNAレベルで決まっているのが、最近の研究で明らかになっている。この世界の人間は、人間の形をしたナニカなのだろうか。命を軽く見過ぎてやしないか?

また、冒険の受注は依頼センターで受けるそうだが、何の描写もなく登場していた名無しの受付嬢が次のページではイラスト付きで登場していた。情報が一気に入ってきて脳の処理が追いつかなかった。たぶん人生で初めてコンビニに入った時の衝撃に近い。そのくらい情報過多だった。

冒険の依頼の時も、主人公が無双するのを見せつけたいがためだけにヒロインを含めた物語の人物が存在している。そのため、どのシーンを見ても気持ちの悪いヨイショにしかならず、人間味が全く無い。マネキンが人間の真似をしているような印象すらある。

単位が意味不明

冒険者なのだから、当然お金が絡んでくる。

この世界のお金の単位は、ギールス。たぶんFFのお金の単位「ギル」がモデルだろう。ちなみに重さの単位は親切なことに「グラム、キログラム」だ。わかりやすいね。

しかしこのギールス、1ギールス=0.5~1円なのかな? と読んでいたのだが(作中で30万ギールスあれば1ヶ月暮らせるとあった)、途中で報酬が跳ね上がった。1000万ギールスとかハイパーインフレを起こした時点で、冷静に読むのが馬鹿らしくなって考えるのを止めた。

お金の単位への理解が追いつかないから、山分けとかれされも余計にわからなくなる。進行諸島氏の描く世界はどれもとても優しいので、みんな主人公の力を認めて多めにお金をわけてくれるのが親切だ。お金をそんなザル計算していいんですかね、と思えてくる。いいんだろうな、ナーロッパだし。

住民が野蛮人

どうやら「極めた錬金術に、不可能はない」の世界には、国が存在しているらしい。そして国はしっかり税金を取っている。根無し草のような存在の冒険者も例外ではないらしく、彼らからもしっかりと税金を取っているそうな。どうやって? それらしい描写は全く無かったけど。消費税にしてはどれも端数が綺麗ですね。

冒険者はもちろん、自分が住んでいる国の制度を知らない。税金泥棒という四文字熟語は知っているくせに、他の制度は知らないらしい。そりゃすぐ命落とすわと思わず納得。死ぬべくして死んでいる。

なろう主人公の嗜み、特殊空間バッグ

MMORPGで言うところの「倉庫」である。そう、集めた物品を収納して持ち運びできるアレだ。

「極めた錬金術に、不可能はない」でももちろん完備している。これほど他者にマウントが取れるアイテムはない。しかも手に入れたアイテムをどうするか作者が考えなくて良いというおまけ付き。素晴らしい、活用しない手はないね。

ちなみに主人公の作った特殊空間バッグは「中身を2%まで圧縮できる」そうで、数字の意味不明さは置いておいて謎のマウントをヒロインに取っている。人間性だけバッグに収納できていませんよ?

なろう系主人公のウーバーイーツ利用商品No.1「ドラゴン」

やっぱりドラゴンがいなきゃなぁ!

ということで、最後にはドラゴンと対峙して終わる。どうせいつものことで、ドラゴンを倒して「主人公さますげぇ!」となるか、実はドラゴンがなよなよしていて「ご主人様、ついてきますっす!」になるかの二択だろう。だって、全ての作品でそうだったから。

しかし主人公以外には滅法強いのもドラゴンの特徴だ。果たしてドラゴンがどう活躍するのは、次の二巻で楽しんでくれ。僕は読まない。

良かった点

悪かった点ばかりを羅列していても仕方が無い。ここからは良かった点を挙げていこうと思う。

読みやすさ

これは進行諸島氏の作品全てに共通することだが、余計な情報が一切無い。ある種、読者との共通認識がある上で物語が進んでいく。そのため、キャラクター描写や世界観の描写は各々が勝手に思い描くスタイルになる。

それもあって字の分は空白だらけで読みやすく、全体のボリュームとしては薄い本と同じくらいだ。時間の無い人や、文字を頭に入れたい人、とりあえず本を読んだという経歴だけが欲しい人には、バッチリ合うだろう。

以上だ。

まとめ:味のしないところてん。よっぽどの好き者でも無い限り、読むべき本ではない。

以上が総評だ。

感想を書きながら本を読み込んだが、半日経ったらほとんど忘れていた。

それくらい記憶に残らない物語になっている。

進行諸島氏の書籍は、良くKindleアンリミテッドで見かける。あれで読まれた回数も販売数に含まれるのだとしたら、なるほど確かに○○○万部というのも納得できる。だってそれだけ売れているのに書店で見かけないもの。

とりあえず金額分の元を取ろうとか、読むものないから時間つぶしに……という面においては非常に役に立つ。

  • 本番であるドラゴンと戦う前で終わる
  • 中身のないスカスカな文章
  • 空白だらけのページ

これらを加味した上で1000円を超える金額で販売するとか、正気の沙汰じゃない。

いつものことだが、もっと中身を詰めて、読者により深く作品を味合わせてくれるものを期待したいと思い、ここに筆を置くかせていただく。

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