【なろう作品】本当に読むの?『賢者シリーズ』には手を出すな!【レビュー】

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「賢者シリーズ」をご存知だろうか? 進行諸島氏が執筆している作品群を総じて指す言葉であり、「賢者」となった主人公が無双する話のことである。

この記事を執筆時(2021年6月16日)において、4作品が刊行されている。

  • 失格紋の最強賢者~世界最強の賢者が更に強くなるために転生しました~
  • 転生賢者の異世界ライフ
  • 異世界賢者の転生無双~ゲームの知識で異世界最強~
  • 異世界転生で賢者にって冒険者生活~【魔法改良】で異世界最強~

進行諸島氏は他にも作品を発表しているが、代表作は『失格紋の最強賢者』となる。コミックでは一部ネット界隈で話題になった『異世界賢者の転生無双』になるか。

どれも打ち切りがほぼなくずっと刊行されているので、一定以上の人気を誇っているのはわかる。

しかし、ここ1年ほど追っかけまくって、かつKindleアンリミテッドで読みまくったからこそ、「いやこれひでーな」と思うに至ってしまったので、今回は語っていきたいと思う。

念のためにはなるが、断じて作品自体を批判するものではなく、あくまでも個人の感想であることをご承知いただきたい。

・進行諸島氏の作品ってめっちゃるけど、実際面白いの?
・オススメはある?
・アニメ化するから、軽く知っておきたい

と思っている人には参考になると思う。

なお、結論を先に言ってしまうと、合う人にしか合わない作品だ。

同氏の別作品については以下の記事をご参照あれ。

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あさき
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目次

賢者シリーズの各作品解説

では、まず賢者シリーズを個々に見ていくとしよう。

失格紋の最強賢者 ~世界最強の賢者が更に強くなるために転生しました~

長いタイトルでさっそくなろう小説だとわかる。親切だ。

失格紋の最強賢者は、最弱の紋章で最強と呼ばれていた主人公が同じ世界の遙か未来に転生し、自分が望む紋章を手に入れて無双するというものだ。

初っぱなから情報過多ですまない。だがこれがなろう小説だから耐えて欲しい。

ポイントは以下。

  • 紋章は4種類ある
  • 最強だった紋章が、転生後の時代で最弱となっている
  • 文明と魔法技術が衰退している
  • 人間と魔族が争っている

なろう小説に慣れている人なら、「あ、ナーロッパだ!」とすぐにわかる世界設定だ。

ちなみにナーロッパとは、「なろう風中世ヨーロッパ」の造語で、ドラクエⅢのような世界観を思い浮かべてくれたらいい。

主人公のガイアスは準男爵家の三男・マティアスとして転生し、王立第二学園に通いながら無双していく主人公。

宇宙に住むとされる強力な魔物と戦うのが目的らしいが、序盤では全く触れられないので、必要ないよねそれ状態な設定となっている。

魔法を無詠唱で使い、学園生に教えて「マティアスしゅごい」とちやほやされ、学園長や国王にまで認められている。

ヒロインはふたりいるが、基本的にマティアスの従者みたいな感じなので、どうでもいい。マティアスを持ち上げる女その1とその2の認識でOKだ。

学園を舞台にした無双を見たいなら、失格紋の最強賢者になる。

アニメ化もされたから、知っている人は知っている作品だろう。個人的に進行諸島氏の作品で推すならこれ

ちなみに主人公がガイアス時代のスピンオフ作品も刊行されている。

転生賢者の異世界ライフ

賢者シリーズの2作目は、ブラック企業に勤めていた社畜主人公のユージが異世界に転生し、賢者として無双するというもの。こちらもアニメ化された。

個人的に1番読みふけった作品。精神がすり減っている時に読むと、ストレスを感じないのでオススメ。

内容に関しては、転生とあるが実際は異世界転移。タイトル詐欺である。主な要素は以下。

  • HPとMPがある
  • 魔物を仲間にする
  • スライムがいっぱい出る

書くことに困るくらい、内容が無い。

さてこのユージだが、異世界に転移した後すぐに魔物を操る「テイマー」という職業になっていた。ドラクエの職業と同義だ。細かいことを気にしてはいけない。

しかしテイマーだというのに、強力な魔法をバンバン放つ。

最弱と呼ばれるスライムを仲間に加え、うち捨てられた小屋でスライムと共に魔法の書物を読むと、あら不思議。強力な魔法をいっぱいストックしちゃった! という設定。凡人には理解できない。

しかも便利なもので、今はわからなくても必要になったら覚えられなかった魔法を覚えられるらしい。なんじゃそりゃ。ご都合主義じゃないの。

「俺なにかやっちゃいました?」な無自覚系主人公なので、騒ぎになりたくないから穏便に済まそうと思っているくせに、自分から首を突っ込むという訳がわからない性格をしている。

事あるごとにブラック企業をアピールするので、徹夜してイキっている中学生のような痛さを感じるのが特徴だ。

ヒロインが全くいないのも大きな特徴。女っ気が全くない。

ハーレムとかチョロいヒロインが嫌いな人にはオススメしたい作品。

異世界賢者の転生無双 ~ゲームの知識で異世界最強~

今回も舞台はナーロッパ。

VRMMORPGのサービス終了と共に、それに似たような異世界へ転移した主人公が、ゲームの知識を使って無双するというもの。

賢者とあるのは、ゲームにおいて最強の職業である賢者に主人公がなるからだ。

ちなみに転移した異世界に賢者という職業はない。はいはい、いつもの。

主な要素は以下。

  • VRMMOPRGに似た世界に転移

もうこれくらいしか特徴が無い。

ゲームを基盤としているので、MMORPGを1度でも遊んだ人ならすんなり理解できるのが特徴。

物語では賢者という職業がないので、主人公は「ノービス」という初期職業から、ダーマ神殿のようなうち捨てられた教会で勝手に転職して賢者になる。もう何でもありだ。

また、ゲームではザコだった魔物も異世界ではかなり強化している。そのため主人公がザコとして討伐したらみんなに驚かれて、よいしょされる。

ちなみに、何故かキャラクターが技名を叫ぶし、コンボとか言い放つ。ゲームとごっちゃになってるよ、大丈夫?

リアル路線で考えるとどうしても違和感を覚えてしまう作品。

 

異世界転生で賢者になって冒険者生活 ~【魔法改良】で異世界最強~

今回はえっと……どうだったかな。

焼き回しのような世界観ばかりで、リアルに忘れた。全く記憶に残らないのだ。

ああ、すまない。思い出した。

前世で最強の魔法知識(?)で転生した主人公は、当たり前のように文明と魔法技術が衰退した異世界で無双するというもの。

他の作品と違うのは、以下の点。

  • 近代っぽい道具がある(スマホなど)

くらいだ。

魔法の改良とあるが、どの作品でも後出しで新しい魔法をポンポン出されるから、何をどう改良しているのかさっぱりわからない。同じだ。

進行諸島氏は他の作品と同時並行で連載していることもあって、リアルタイムで追いかけていると読者側で設定がわからなくなる。

この点にだけは注意してくれ。

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賢者シリーズの良いところ

もうお腹いっぱいかもしれないが、ここからが本題だ。

さて、無駄に量産されている進行諸島氏の賢者シリーズだが、良いところがちゃんとある。

そうでなければシリーズ累計で600万部以上を売り上げたりしない。

良いところは以下。

  • 読みやすい
  • 情報の出し方が的確
  • 必要最小限の情報量でわかりやすいようにしている

進行諸島氏の作品に共通していることだが、読者が抱く共通イメージを使うのが非常に上手い。必要な単語を必要な場所でだけ使うから、ぱっと場面をイメージできるのだ。

しかも簡単な言葉を使ってくれるので、本を読み慣れていない人でもイメージしやすい。

そのため少ない文字数で物語を展開できる。

イラストを主体としたエロゲーのような文字量であるにも関わらず、すんなりと理解できるのはそれが理由。

簡単に真似ができるものではないので、氏の実力・センスの賜だろう。

また副次的な効果として、空白が多いからスカスカで目を滑らせて読めるし、ストーリーにも中身がないので深く考えずに読めるメリットもある。

全くストレスを感じず。30分後には読み終えるのだ。これは凄い。

読書はしんどいけど、本を読みたいという人には最高の一冊になってくれる。

  • 仕事のストレスで鬱っぽい
  • エンタメを消費するだけの気力がない

これらの人にはオススメ。僕自身、鬱状態になった時に賢者シリーズだけは読めた経験がある。ストレスを感じない物語だからこそだ。

賢者シリーズの悪いところ

ここからは長くなる。覚悟されたし。

世界観が全くわからない

通常、世界観はしっかり作るものだ。それは作者と読者が共通認識で成り立っているナーロッパとて変わらない。

  • どんな国があるのか
  • どんな街があるのか
  • どんな種族がいるのか
  • どんな生活があるのか

これらは、物語を作る上で最低限必要だ。

何故なら、それらが無いと深く世界を描けないからだ。ひいては、キャラクターを動かせなくなってしまう。

世界設定は、例え主人公がいなくてもその後の未来が見えるくらい作り込むのが、最低限必要なのだ。

世界観を深く作り込んでいても、それらを表に出す必要も全くない。

ただ、作り込んだ世界設定は、その世界に息づくキャラクターたちの行動原理として自然と出てくるし、物語に深みを持たせることができる。

作り込むことで世界観に“遊び”ができるので、二次創作しやすくなるメリットもある。

だからこそ、世界設定を丁寧に作り込む必要がある。

現代社会と同じようにメートル法や重量の単位があるのはおかしい。金の単位名を変えるだけの知恵があるなら、同じようにやらんかい。

描写を読者に委ねすぎている

賢者シリーズは描写を徹底的にしない。恐らく意図的だろう。

街の名前はあっても、どこからどう移動したのかもわからないし、どんな規模感なのかの描写もない。

ダンジョンに潜るならどんなダンジョンなのかを説明して欲しいし、モンスターや魔物を登場させるならどんな姿をしているのかを最低限描写して欲しいのだ。

僕たちが欲しいと思うこれらの情報は、賢者シリーズにとって主人公を立たせるための装置でしかない。

だから装置に余計な力を入れない。余計な力を入れないから、描写もしない。

ダンジョンはおそらく「トルネコ」や「シレン」のようなのだろうなと、読者の持つイメージに委ねているのだ。

これは共通認識を元に作品を読む“なろう”にとっては非常に合理的な作り方だ。

元々ゲームなどのエンタメ作品に親和性の高い読者だからこそ、ストレスなく入り込める。

だがしかし、そんな手抜きがあってたまるか。

高い金を払って行ったレストランのコース料理が手抜きで出されたようなものだ。

とてもじゃないが、擁護できる代物じゃ無い。

主人公がみんな同じ

賢者シリーズの主人公は、みんな同じだ。

顔や髪型が違うだけで、基本的に性格や地の文(一人称)が同じ。そのため、どの物語がどの主人公なのか、並行して読んでいると全くわからなくなる。

それは主人公だけに止まらず、ヒロインやヨイショキャラも同じだし、主人公に従う魔物の性格や口調に至るまで同じ。

敵だって同じだ。同じ台詞を喋って、同じように驚いて同じように退場する。

書き分けが全くできていない

この記事を書きながら、何度も確認のために本を見返した。だって何のキャラなのかわからなくなるんだもの。

それくらいキャラクターに特徴がないし、世界観にも特筆すべきものがない。

もうたったひとりの主人公がいろんな世界に転生している、でいいと思う。そして、イースシリーズのように後で振り返っているみたいな。

どの主人公も自分の力で無双して、敵からは被弾しない。弱い敵を見下し、徹底的にやっつけて解決。性格の悪いストライクフリーダムか。

おそらくだが、進行諸島氏の作品のキャラクターが全て集まるお祭り的な話があったとしたら、誰かわからなくなるに違いない。

敵が同じ

賢者シリーズは大体何かしらの組織と敵対する。

敵は共通して世界規模で暗躍しているのだが、名前が違うだけでやっていることはほとんど変わらない。

短期間にこれだけシリーズを出しているのだから、さぞいろんな引き出しを持っているのだろうと期待していたが、どれもこれも似たようなものばかり。

しかも総じて、敵が間抜けだ。

「転成賢者の異世界ライフ」ではスライムを使って敵組織の情報を得るのだが、全く気がつかない無能っぷり。

主人公が介入しなくても勝手に壊滅するレベルでアホだ。ただ味方もアホだからバランスは取れている。

こうした主人公無双モノでは、総じて敵は無能になりがちだが、それでも一介の戦士として身を立てているのだから、確かな考えで行動して欲しい。

ふははは、どうだこれでお前も終わりだ!→ふん、こんなものか→な、なにぃっ!? 今のを耐えるだと!?

の一辺倒。さっきも見たとなる。

お決まりのパターンは安心感をくれるのは間違いない。暴れん坊将軍や水戸黄門がこれだけ人気なのも、王道で物語展開がわかっているからだ。

だがそれも形を変えてなんぼ。同じパターンを何度も見せつけられるといい加減飽きる。

賢者シリーズはストーリー展開がどれも同じだから、1巻飛ばしていようが関係なく読める。

魅力的な敵キャラクターをぜひ配置して欲しいと心から思う。

描写不足

作品全般に通じるのだが、描写が圧倒的に足りない。

世界観の描写もそうなのだが、キャラクターが何をしてどうなったのかの描写も足りていない。

そのため、コマ送りされたような感覚に陥る。あれっ、何か10秒ほど飛んでない? みたいな状態が常に続く。

例えるなら、台本の台詞文だけを読まされているような状態だ。

これがエロゲーならイラストやSE、BGMで理解できるのだが小説だと文字しかないので無理。

キャラクターが何をしてどうなったのかが最低限しか書かれていないので、それを読者の側で補完しなければならない。

何故読者が補完しなければならないのだ。それは作者が読者に提示しなければいけないものだろう、と言いたい。

行間がスカスカ

賢者シリーズのみならず、進行諸島氏の作品全般に言えることだが、行間が空きまくっている。

もちろん通例としてネット小説では、ある程度行間を空ける場合が多い。

このブログでもそうであるように、行間を空けるのは読みやすくするためだ。

縦書きの紙の本だと起こらないのだが、パソコンやスマホの画面だとどうしても目が滑ってしまう。そのため、わざと行間を空けて読者が読みやすいようにしている。

反対に紙の本だと行間を空ける理由は全く無い。しかし、件砂利シーズは何故か行間が空きまくっている。スカスカだ。紙の本でも容赦なく空いている。スカスカだ。(二度目)

これで1,000円以上するんだから、もう騙されたと言っても言い過ぎじゃない。

書籍化するならせめて書籍化に適した形にして欲しいし、無駄な場面で終わるくらいならキリの良いところで終わって欲しい。

何より、その空けまくった空間で描写しろ!

『賢者シリーズ』は時間と金を無駄に使いたい人にオススメ

「賢者シリーズ」に代表される進行諸島氏の作品は、総じて本をほとんど読まない人向けの作品になる。

しかしながら普段からアニメやゲームに触れていない人間にとっては、描写不足でさっぱりわからないという面を持つ。

  • 濃密な物語を楽しみたい人には向いていない
  • みんな主人公が同じ
  • どれか1冊読めば他シリーズもだいたいわかる

以上が賢者シリーズにおける個人的な感想だ。

ここ数日間、ずっと読み続けたが、僕にはもう限界だ。

ただ重ねて言うが、情報の取捨選択は非常に上手いのも間違いない。

読者が欲しい情報を的確に出しているのは、素直に凄い。書き手としても勉強になる。

気になる人は、Kindleアンリミテッドを推奨。無料で何作も読めるのでオススメ。

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